千葉隆弘は暴虐の衝動を抑え込み、目を逸らした。
素早く上着を脱いで女性の体に掛け、しっかりと抱きしめた。
腕の中の小山千恵子は羽毛のように軽く、全身から異常な熱を発していた。
「行くぞ」
千葉隆弘は歯を食いしばって命令し、彼女を連れて立ち去った。
浅野武樹は知らせを受け、すぐに中腹別荘に戻った。
遠くから数台のハマーが列をなして走ってくるのが見えた。
浅野武樹は眉をひそめ、目を細めた。
千葉家の次男、随分と派手な出で立ちだな。
真ん中のハマーが浅野武樹の車を通り過ぎ、真っ黒なウィンドウを下ろした。
小山千恵子は真っ青な顔で千葉隆弘の肩に寄りかかり、顔には病的な紅潮が浮かび、額には冷や汗が浮いていた。
また具合が悪くなったのか?
浅野武樹は千恵子の手首の青あざを見て、思わずハンドルを強く握りしめ、千葉隆弘の冷たい眼差しと目が合った。