小山千恵子は体力が限界に達し、すでに息を切らしていた。
彼女の全身が小刻みに震え、手首は赤く腫れていた。
ジッパーの音が響き、小山千恵子は絶望的に目を閉じ、涙が目尻から流れ落ちた。
静寂を破る着信音が鳴り響いた。
浅野武樹の携帯だった。
小山千恵子は心臓が飛び出しそうになったが、思わず安堵のため息をついた。
着信を確認した浅野武樹の表情が一瞬で冷たくなり、素早く電話に出た。
「もしもし?美月どうした?」
電話の向こうは泣きそうな家政婦の声だった。
「浅野さん、お嬢様がまた自暴自棄になってしまって、私たちでは止められません。お嬢様を制御できるのはあなただけです...」
「すぐ戻る」
浅野武樹は床に倒れている女性を冷たく見つめ、傲慢な表情で服を整えると、部屋を飛び出した。
浅野武樹は猛スピードで車を走らせ、急いで浅野実家へ向かった。