第13章 小山千恵子、この驚きは気に入った?

小山千恵子が目を覚ましたとき、すでに午後だった。

見慣れた天井が目に入る。これは彼女と浅野武樹の新居だ。

どれくらい帰ってきていなかったのだろう……

桜井美月が浅野家に入ってから、浅野武樹は浅野実家に住むようになり、ここには戻ってこなくなった。

小山千恵子は祖父の世話をしやすいように、療養院に住んでいた。

広大な中腹別荘は、静まり返っていた。

小山千恵子が体を動かすと、思わず息を呑んだ。

全身が車に轢かれたように痛み、腰は酷く痛んで起き上がれなかった。

浅野武樹の体力は相変わらず旺盛だが、彼女はもう限界だった。

小山千恵子は必死で起き上がり、きれいな服に着替えて、出ていこうとした。

昨夜、浅野武樹は何の対策もせず、小山千恵子は本当に心配だった。

浅野武樹は彼女に子供を産ませる決意を固めたようだ。

今の彼女の体調では、絶対に妊娠できない。

小山千恵子は静かに階段を降り、ダイニングで忙しそうにしている田島さんを見て、驚いた。

田島さんは幼い頃から浅野武樹の世話をしており、彼女のこともよく知っていた。

でも桜井美月が来てから、田島さんは実家に戻ったはずなのに……

田島さんは小山千恵子を見て、とても喜び、笑顔を見せた。

「奥様、お目覚めですか?旦那様が用意させた料理は、全てお好きなものばかりです。」

小山千恵子は目頭が熱くなったが、必死で心を強く保った。

「田島さん、ご迷惑をおかけしました。私は行きます。」

田島さんは中庭の方をちらりと見て、慌てて手を拭い、急いで出てきた。

「旦那様が特に指示されまして、奥様のお世話をするようにと。仕事が終わったら戻ってくるとおっしゃっていました。」

小山千恵子は中庭と玄関の警備員を見て、田島さんの慌てた表情を見て、何かを察した。

浅野武樹は彼女をここに軟禁するつもりだ。

「彼はここに戻ってくるの?」

田島さんは頷いた。「旦那様はずっとここにお住まいです。週末に時々実家に行かれる程度です。」

小山千恵子は驚いた。

浅野武樹は今でもここに住んでいるの?

昨日散々痛めつけられ、小山千恵子は全く食欲がなかった。

上の空で食事をしながら、玄関と中庭の様子を窺っていた。

このまま座して待つわけにはいかない。

以前は静かだった中庭に、今は三、四人の浅野家の警備員が立っていた。

正門も裏門も厳重に警備されていた。

この様子では、浅野武樹は彼女を出すつもりはないようだ。

小山千恵子は携帯を取り出し、藤原晴子とのチャットを開いて、急いで数文字を打った。

——大丈夫よ、中腹別荘にいるの。今は出られないけど、なんとか対処するわ。

夕食を済ませ、辺りは暗くなってきた。

浅野武樹はまだ戻っていないが、警備員は一人も減っていなかった。

小山千恵子は無数の目に見られるのが嫌で、書斎で運試しをしようと思った。

書斎は指紋認証で施錠されており、使用人には権限がなかった。

小山千恵子は細い白い手を書斎のドアに当てた。

指紋認証がカチッと音を立て、すんなりと開いた。

小山千恵子は少し驚いて、中に入った。

中は真っ暗だった。

鼻に馴染みのある木の香りが漂っていた。

浅野武樹の匂いだ。

壁のスイッチを探して、書斎の明かりをつけた。

部屋全体が明るくなり、室内の配置は以前と変わっていなかった。

あの赤褐色の革のソファで、彼女と浅野武樹は一人一冊の本を持って、数えきれないほどの午後を過ごした。

床から天井までの窓の傍らには、彼女専用のイーゼルが空っぽのまま、寂しげに立っていた。

振り返ると、書斎の机の前の壁に、かつて巨大な名画が掛かっていた場所が、今は赤いベルベットの布で覆われているのに気付いた。

小山千恵子は何かに引き寄せられるように、そちらに歩み寄った。

ベルベットの布で覆われているそれは、まるで口に出せない秘密のようだった。

慎重に布を剥がすと、小山千恵子は慌てて手を離し、思わず叫び声を上げそうになった。

彼女は顔面蒼白になり、目の前の光景に衝撃を受けて目が暗くなり、耳鳴りがした。

木の板には多くの書類と写真が貼り付けられていた。

中央には、鮮明な写真があった。

そこには焼け焦げた遺体が写っていた!

小山千恵子は一目見ただけで分かった。それは浅野武樹の母親、藤田錦だった。

当時、藤田おばさんは港の廃倉庫で火災に遭い、事件は事故と判断された。

浅野武樹は子供の頃、その暗い影から抜け出すのに随分と時間がかかった。

小山千恵子は震える手で口を押さえ、瞳孔が激しく揺れながら、隣に貼られた一通の手紙を見た。

見慣れた文字、清楚で優雅な筆跡。

母親の小山雫の字だった!

——お父さん、私が錦に申し訳ないことをしました。もう時間がありません。私はこれで行きます。私を責めないでください。

——千恵子さんの面倒を見られなくなってしまいました。ただ彼女が勇気を持ち、希望に満ち、穏やかな人生を送ることを願っています。

——私の死が、全ての恨みをここで終わらせ、次の世代に負債を残さないことを願います。

——お父さん、申し訳ありません。

小山千恵子はよろめきながら後ずさり、腰が机の角に当たったが、痛みすら感じなかった。

「私が錦に申し訳ないことをしました」という文字が、この瞬間特に目に痛かった。

これは彼女が見たことのない、母が祖父に宛てた遺書だった。

小山千恵子は全身の血が凍るのを感じ、胸が締め付けられるように痛んだ。

幼い頃から祖父は、母は病気で亡くなったと言っていた。

浅野武樹の母である藤田おばさんと親友だったから、彼女を浅野家に託したのだと。

今や浅野武樹は、母が藤田おばさんを殺した犯人だと口を揃えて言う。

信じられない!

小山千恵子は涙で視界が曇りながらも、自分を強いて、板に貼られたものを一つ一つ確認した。

死亡証明書、事件の追跡調査、金銭の取引、決定的な証拠……

全てが一つの結論を指し示していた。

自分の母親、小山雫こそが、背後に潜む犯人だったのだ!

小山千恵子は膝から崩れ落ち、絶望的に柔らかいカーペットの上に座り込んだ。

目の前の全てを説明することができなかった。

まさか母が、本当に藤田おばさんを殺した犯人だったのか……

街灯が灯り始める頃、黒いカリナンがゆっくりと中腹別荘の車庫に入ってきた。

浅野武樹は遠くから、書斎に暖かな黄色い明かりが灯っているのを見た。

入れる人間は、この別荘で小山千恵子しかいない。

彼女は自分が用意したサプライズを見ただろうか?

男の表情は陰鬱で残忍で、口元には狂気じみた笑みを浮かべていた。

小山千恵子よ、他人が何と言おうと、お前自身の目で確かめるのが一番だ。

男は大股で邸内に入り、真っすぐ階段を上って書斎へ向かった。

小山千恵子は入口から聞こえる足音に、息もできないほど慌てた。

ドアノブが激しく回された!

浅野武樹が死神のように入口に立ち、部屋の中で震える女を見下ろした。

小山千恵子は驚いて机の角を掴んで立ち上がり、思わず後ずさった。

浅野武樹は熟練した狩人のように、悠々と部屋に入ってきた。

重厚な書斎のドアが彼の背後で閉まり、鍵が下りた。

小山千恵子の細い体が震え、壁際まで追い詰められた。

まるで目を赤くした、怯えた兎のように。

この空間で、彼女には逃げ場がない。

浅野武樹が一歩一歩近づいてきた。

まるで落ち着き払った狩人が、罠の中で暴れる獲物を見つめるように。

「小山千恵子、このサプライズは気に入ったか?」

小山千恵子は言葉が出ず、息が詰まり、もう下がれなかった。

黒い髪が男に乱暴に掴まれ、引きずられるように木の板の前まで連れて行かれた。

「黙っているのか?ならもう一度よく見るんだな。」