大野武志は心臓が飛び出すほど驚き、脂ぎった顔から冷や汗が噴き出した。
彼はずっと浅野武樹を眼中に入れていなかった。
彼、大野武志は南港を掌握しており、この若造の物流の八割は彼の関所を通らなければならなかった。
自分が半生をかけて築き上げた人脈が、そう簡単に奪われるはずがない!
部下が連行され、自分もしっかりと縛られるのを見て、大野武志は胸に不吉な予感が走った。
これだけ時間が経っているのに、自分の部下が現れないということは、おそらく既に制圧されているのだろう。
それに、この浅野武樹は噂に聞いていた軟弱な若造ではなかった。
この数発の拳で、彼の頭は朦朧としていた!
浅野武樹は彼と長々と時間を費やすつもりはなかった。彼の心は小山千恵子のことで一杯だった。
彼女は一人で、なぜここに来たのか?