ボディーガードたちは順番に部屋を出て行った。
ドアがバタンと閉まり、小山千恵子は雷に打たれたような衝撃を受けた。
体の中に奇妙な熱が再び湧き上がってきた。
大野社長の短く太い油ぎった手が彼女の襟を引き裂き、にやりと笑った。
「感じてきたか?」
小山千恵子は顔面蒼白で、全力で抵抗しようとしたが、まるで痒みを掻くような力しか出なかった。
「助けて……」
彼女は力が入らず、テーブルの上のグラスに目を向けた。
ここで辱めを受けるくらいなら、死んでやる方がましだ。
シシさんは小山千恵子が去っていくのを見ながら、右まぶたが止めどなく痙攣していた。
一人きりの女性が大和帝国にいるのは、狙われる可能性が非常に高い。
個室に連れ込まれて、その場で犯されて、荒野に遺棄されたら、探すことすらできない。
あの子を送り出しておけばよかった。
シシさんは立ち上がり、入り口でドアボーイを捕まえた。
「さっき薄紫のワンピースを着た女の子が出て行かなかった?」
ドアボーイは慎重に思い出そうとした。
「印象にありません。たぶんいませんでした。一人で出て行く女性は必ず覚えているはずです。」
シシさんは不吉な予感がした。
今日は帝都の実力者の一人で、最も厄介な大野武志が大和帝国にいる。
この男は表と裏両方に通じていて、もともと手を出してはいけない相手だ。
それに加えて大和帝国では特に事を起こしやすい。
間違いなければ、大野武志と浅野家はもともと確執があった。
シシさんは考えれば考えるほど心配になり、早足でフロントに向かい、珍しく焦った様子で尋ねた。
「大野社長はどの部屋?」
フロントは確認して答えた。「シシさん、大野社長は958号室です。」
シシさんは急いで大野社長の個室に向かい、ドアの外で女性の微かな助けを求める声が聞こえた。
まずい!
シシさんは簡単な手配をして、覚悟を決めてドアをノックした。
「大野社長、接待の女の子たちの声が外まで聞こえていますが?気に入らないようでしたら、もっと良い子を呼びましょうか?」
シシさんは部屋の中の状況を察していたし、大野武志が素直にドアを開けるとは思っていなかった。
しかし時間を稼いで、援軍を待つしかない。一秒でも稼げるだけ稼ぐ。
浅野ビル、社長室。