第25章 浅野若様は女を気にかけているのか?

ボディーガードたちは順番に部屋を出て行った。

ドアがバタンと閉まり、小山千恵子は雷に打たれたような衝撃を受けた。

体の中に奇妙な熱が再び湧き上がってきた。

大野社長の短く太い油ぎった手が彼女の襟を引き裂き、にやりと笑った。

「感じてきたか?」

小山千恵子は顔面蒼白で、全力で抵抗しようとしたが、まるで痒みを掻くような力しか出なかった。

「助けて……」

彼女は力が入らず、テーブルの上のグラスに目を向けた。

ここで辱めを受けるくらいなら、死んでやる方がましだ。

シシさんは小山千恵子が去っていくのを見ながら、右まぶたが止めどなく痙攣していた。

一人きりの女性が大和帝国にいるのは、狙われる可能性が非常に高い。

個室に連れ込まれて、その場で犯されて、荒野に遺棄されたら、探すことすらできない。

あの子を送り出しておけばよかった。

シシさんは立ち上がり、入り口でドアボーイを捕まえた。

「さっき薄紫のワンピースを着た女の子が出て行かなかった?」

ドアボーイは慎重に思い出そうとした。

「印象にありません。たぶんいませんでした。一人で出て行く女性は必ず覚えているはずです。」

シシさんは不吉な予感がした。

今日は帝都の実力者の一人で、最も厄介な大野武志が大和帝国にいる。

この男は表と裏両方に通じていて、もともと手を出してはいけない相手だ。

それに加えて大和帝国では特に事を起こしやすい。

間違いなければ、大野武志と浅野家はもともと確執があった。

シシさんは考えれば考えるほど心配になり、早足でフロントに向かい、珍しく焦った様子で尋ねた。

「大野社長はどの部屋?」

フロントは確認して答えた。「シシさん、大野社長は958号室です。」

シシさんは急いで大野社長の個室に向かい、ドアの外で女性の微かな助けを求める声が聞こえた。

まずい!

シシさんは簡単な手配をして、覚悟を決めてドアをノックした。

「大野社長、接待の女の子たちの声が外まで聞こえていますが?気に入らないようでしたら、もっと良い子を呼びましょうか?」

シシさんは部屋の中の状況を察していたし、大野武志が素直にドアを開けるとは思っていなかった。

しかし時間を稼いで、援軍を待つしかない。一秒でも稼げるだけ稼ぐ。

浅野ビル、社長室。