桜井美月の目に一瞬の悪意が閃き、表情は狂気じみて歪んでいた。
小山千恵子が本当に罠にかかった!
実家のあの部屋の全てを、彼女はもう準備していた。
小山千恵子が来さえすれば、彼女を社会的に抹殺してやる!
小山千恵子と桜井美月は浅野実家で会う約束をし、藤原晴子が車で送り届けた。
小山千恵子はマスクをつけ、完全武装で浅野家の中庭に入った。
庭には一面に百合の花が咲き誇り、清らかで無害な白さだった。
小山千恵子は喉が痒くなり、足早に邸宅に入った。
茶室は空っぽで、小山千恵子は表情を引き締めた。
今日は浅野旦那様が実家にいない。
使用人たちは小山千恵子を邸宅の二階に案内すると、次々と下がっていった。
広大な邸宅は静寂に包まれ、小山千恵子はさらに警戒を強めた。
目の前の主寝室のドアを見つめ、心が締め付けられるように痛んだ。