第37章 私はあなたを自ら戻らせる

小山千恵子は広い革張りのソファーに弱々しく横たわり、目の前がぼんやりとしていた。

浅野武樹の背の高い姿が彼女に背を向け、うつむいたまま、シャツのボタンを一つずつ留めていた。

「お金は寺田が振り込むから、この録音を二度と目にすることがないようにしろ」

浅野武樹は冷たい言葉で脅した。

彼の目的はこの録音証拠を買い取ることだった。

桜井美月は浅野家の養女であり、彼女を刑務所に入れるわけにはいかなかった。

彼女のためでなくても、浅野家の名誉を汚すわけにはいかなかった。

小山千恵子は心が枯れ果てたように、冷笑を浮かべながら、ゆっくりと襟元を引き締めた。

「私はこれで手を引くつもりだったのに」

浅野武樹の手が止まり、小山千恵子を振り返った。目には危険な光が宿っていた。

「つまり、脅しているのか?」