小山千恵子は広い革張りのソファーに弱々しく横たわり、目の前がぼんやりとしていた。
浅野武樹の背の高い姿が彼女に背を向け、うつむいたまま、シャツのボタンを一つずつ留めていた。
「お金は寺田が振り込むから、この録音を二度と目にすることがないようにしろ」
浅野武樹は冷たい言葉で脅した。
彼の目的はこの録音証拠を買い取ることだった。
桜井美月は浅野家の養女であり、彼女を刑務所に入れるわけにはいかなかった。
彼女のためでなくても、浅野家の名誉を汚すわけにはいかなかった。
小山千恵子は心が枯れ果てたように、冷笑を浮かべながら、ゆっくりと襟元を引き締めた。
「私はこれで手を引くつもりだったのに」
浅野武樹の手が止まり、小山千恵子を振り返った。目には危険な光が宿っていた。
「つまり、脅しているのか?」