第50章 彼は本当にあなたに気があるのかしら

渡辺昭は笑って言った。「長い付き合いなんだ」

小山千恵子は興味を持って尋ねた。「知らなかったわ。彼がスターと知り合いだったなんて」

渡辺昭はいつもの軽薄な態度に戻り、小山千恵子をからかうように笑った。

「知りたい?それは別料金だよ」

浅野武樹は車の中に座り、遠くから小山千恵子と渡辺昭が楽しそうに話している様子を見て、心の中で名状しがたい怒りが広がっていった。

渡辺昭が公然と彼に挑戦してきたのだ。

帝都でこれほどの年月を過ごしてきたが、彼に挑戦してくる者はほとんどいなかった。

そんな大胆な真似をした者たち、例えば渡辺昭の叔父である大野武志のような者は、必ず生きた心地がしない目に遭っていた。

浅野武樹は不機嫌そうにハンドルを握りしめ、小山千恵子が視界から消えるのを見届けてから、無言で車を発進させた。

渡辺昭は強く主張して、小山千恵子を部屋まで送ることにした。

広大な臨海別荘の中を、どんどん人気のない場所へと進んでいき、ようやく目的地に着いた。

渡辺昭は信じられない表情で周りを見回した。この場所があまりにも人里離れていて、気温まで2、3度下がったように感じられた。

「ここに住んでるの?」

渡辺昭は入り口の砂利道を見て、嫌そうな顔で地面のカビを避けて通った。

小山千恵子は何でもないかのように、ドアを開けて中に入り、手を伸ばして渡辺昭を外に遮った。

「ここまででいいわ。送ってくれてありがとう」

渡辺昭は首を伸ばして、小屋の中を覗き込んだ。中は清潔で整然としていたが、窓一つない様子に驚いた表情を見せた。

「いや、千恵子、犬小屋みたいなところに住むの?制作陣が明らかにいじめてるじゃないか」

小山千恵子は笑い出した。「そんなに驚いた?」

先ほど浅野武樹から、制作陣が第一回で彼女を追い出す予定だと聞いたばかりだった。

今見ると、確かにその兆しが見えていた。

渡辺昭は悩ましげに後頭部を掻いた。「君は今僕とCPを組むことになってるんだから、あまりにもみすぼらしいのはまずいだろう。ちょっと考えてみよう…」

「待って—」

小山千恵子は遮らざるを得なかった。どうしても言わなければならないことがあった。

「あなたの言う戦略は適度に使うつもりよ。でもファンの気持ちも考えてほしいの。私は立場が微妙だから、あまり大きな騒ぎは起こしたくないわ」