桜井美月は小山千恵子を一瞥し、目の中の得意げさと険悪さを隠すことなく、ゆっくりと目を閉じ、気を失った。
小山千恵子は心の中で冷笑した。
桜井美月の演技は、今や一段と上達したものだ。
浅野武樹は桜井美月のチームについて行き、彼女が休憩のために運ばれていくのを見送ったが、足を止めた。
確かに桜井美月に収録を見に来るよう呼ばれたのだ。
しかし、今はまだ帰りたくなかった。
収録は小山千恵子と渡辺昭のパートに移った。
道中、小山千恵子は背筋を硬くし、沈黙したまま、思わず眉をひそめていた。
彼女は桜井美月の服装によって、過去の辛い記憶を数多く呼び起こされていた。
浅野武樹が彼女をしっかりと押さえつけ、なぜそんなことをしたのかと何度も問いただす場面。
また、弁護士が最後の土壇場で寝返り、どうあっても敗訴すると告げる場面。
さらに、警察官の冷たく逃げるような目つきで、無駄な抵抗はやめるようにと告げる場面……
渡辺昭は小山千恵子の窮状を見て取り、黙って彼女の傍らを歩いた。
番組スタッフが衣装を取りに行っている間、渡辺昭は大きな手を小山千恵子の頭に置き、低い声で冗談を言った。
「この帽子、番組中ずっとかぶってるつもり?」
小山千恵子は怒った猫のように、頭の上の手を振り払い、両手で帽子のつばを掴んで、半歩離れた。
「髪を洗いたくないだけじゃダメ?」
こういう時はいつも、渡辺昭とCPを組むことを承諾したことを後悔した。
彼の性格が悪戯好きで、不真面目だと言われているのは、確かにその通りだ。
しかし番組に残るため、小山千恵子は歯を食いしばって我慢するしかなかった。
渡辺昭は笑いを抑えきれず、小山千恵子の気分も少し楽になった。
バックステージのこれらの様子は、すべてデザインスペースにリアルタイムで中継されていた。
浅野武樹は二人が何を話しているのか聞き取れなかったが、大画面に映る冗談を言い合う小山千恵子と渡辺昭を見ているだけで、心の中の不快感を抑えるため深く息を吸わなければならなかった。
彼の頭の中には、あの日渡辺昭が言った言葉が蘇ってきた。
「お二人とも離婚するんでしょう?この状態で嫉妬するなんて、離婚の決断を慎重に考え直した方がいいんじゃないですか?」
彼が嫉妬するはずがない。
ただ、自分の物に他人が触れるのが気に入らないだけだ。