第52章 髪を洗いたくないだけじゃダメ?

桜井美月は小山千恵子を一瞥し、目の中の得意げさと険悪さを隠すことなく、ゆっくりと目を閉じ、気を失った。

小山千恵子は心の中で冷笑した。

桜井美月の演技は、今や一段と上達したものだ。

浅野武樹は桜井美月のチームについて行き、彼女が休憩のために運ばれていくのを見送ったが、足を止めた。

確かに桜井美月に収録を見に来るよう呼ばれたのだ。

しかし、今はまだ帰りたくなかった。

収録は小山千恵子と渡辺昭のパートに移った。

道中、小山千恵子は背筋を硬くし、沈黙したまま、思わず眉をひそめていた。

彼女は桜井美月の服装によって、過去の辛い記憶を数多く呼び起こされていた。

浅野武樹が彼女をしっかりと押さえつけ、なぜそんなことをしたのかと何度も問いただす場面。

また、弁護士が最後の土壇場で寝返り、どうあっても敗訴すると告げる場面。