小山千恵子はバカでも、浅野武樹の意図が分からないはずがなかった。
でも彼女は浅野武樹と同じ部屋にいたくなかった。
小山千恵子は考えることもなく、バッグを手に取り、洗面用具と服を詰めて、寝室を出た。
広大な敷地内を三周して、ようやく人里離れた清潔な家政婦部屋を見つけた。
ここにしよう。
小山千恵子は荷物を置き、腰に手を当てて、ほっと息をついた。
部屋は小さいけれど、少なくとも小さな窓がある。
浅野武樹がどんな算段をしているにせよ、彼女は自分のコンテストの進度を邪魔されるつもりはなかった。
デザインスペース。
すでに夜は更けていた。
雨のせいで、デザインスペースはがらんとしていた。
小山千恵子は荷物を置くと急いでやってきた。
二着の衣装を作らなければならないので、一刻も休むわけにはいかなかった。