第60章 小山千恵子は何かを隠しているかもしれない

小山千恵子はバカでも、浅野武樹の意図が分からないはずがなかった。

でも彼女は浅野武樹と同じ部屋にいたくなかった。

小山千恵子は考えることもなく、バッグを手に取り、洗面用具と服を詰めて、寝室を出た。

広大な敷地内を三周して、ようやく人里離れた清潔な家政婦部屋を見つけた。

ここにしよう。

小山千恵子は荷物を置き、腰に手を当てて、ほっと息をついた。

部屋は小さいけれど、少なくとも小さな窓がある。

浅野武樹がどんな算段をしているにせよ、彼女は自分のコンテストの進度を邪魔されるつもりはなかった。

デザインスペース。

すでに夜は更けていた。

雨のせいで、デザインスペースはがらんとしていた。

小山千恵子は荷物を置くと急いでやってきた。

二着の衣装を作らなければならないので、一刻も休むわけにはいかなかった。