第60章 小山千恵子は何かを隠しているかもしれない

小山千恵子はバカでも、浅野武樹の意図が分からないはずがなかった。

でも彼女は浅野武樹と同じ部屋にいたくなかった。

小山千恵子は考えることもなく、バッグを手に取り、洗面用具と服を詰めて、寝室を出た。

広大な敷地内を三周して、ようやく人里離れた清潔な家政婦部屋を見つけた。

ここにしよう。

小山千恵子は荷物を置き、腰に手を当てて、ほっと息をついた。

部屋は小さいけれど、少なくとも小さな窓がある。

浅野武樹がどんな算段をしているにせよ、彼女は自分のコンテストの進度を邪魔されるつもりはなかった。

デザインスペース。

すでに夜は更けていた。

雨のせいで、デザインスペースはがらんとしていた。

小山千恵子は荷物を置くと急いでやってきた。

二着の衣装を作らなければならないので、一刻も休むわけにはいかなかった。

しかし、ここでは疑われないように、予備の原案も完成させなければならなかった。

渡辺昭が自ら買って出て、もう一着のデザインに必要な布地と材料を行政スイートまで安全に運んでくれた。

あと三日、一分一秒を争わなければならない。

小山千恵子はそう考えながら、手を動かすスピードを上げた。

番組側が用意した国産の布地は、質感とドレープ性において輸入品とは比べものにならなかった。

熊谷玲子も慌てた様子でデザインスペースに入ってきた。

黙々と作業をする小山千恵子を見て、さらに不安が募った。

彼女は密かに小山千恵子の衣装を観察した。

確かにあのデザイン画通りのデザインだった。

デザイン画を手に入れた時、熊谷玲子は一度、小山千恵子が原案の流出を知っていて、このような高難度のデザインを作り、計略に乗ったのだと思った。

しかし今見ると、小山千恵子はただ必死にアピールしようとしているだけのようだった。

小山千恵子は家政婦部屋でぐっすり眠り、早朝に起きて部屋で午前中のほとんどを忙しく過ごした。

昼休みが近づいた頃、小山千恵子はあくびをしながらデザインスペースにやってきた。

入るなり、騒がしかった会話が突然止んだ。

小山千恵子はゆっくりと自分のデザインテーブルまで歩き、背中に多くの視線を感じた。

彼女は顔を上げ、さりげなく熊谷玲子のデザインテーブルを見た。

マネキンの上では、衣装がほぼ完成していた。

よく見ると、まさに完全な模倣だった。