桜井美月の収録がまもなく始まる。
浅野武樹は彼女を楽屋に送り届けた後、会社に戻った。
浅野武樹がいなくなり、桜井美月はほっと息をついた。
もう演技も我慢も必要なく、好きなように態度を取れるようになった。
桜井美月は熊谷玲子の助けを借りて、華やかな衣装に着替えた。
車椅子に座り、冷たい表情で後ろの熊谷玲子に指示を出した。
「全部準備できた?」
熊谷玲子はドレスの胸元を見下ろし、何度も確認してから口を開いた。
「問題ありません」
桜井美月は悪意のこもった笑みを浮かべた。
やはり、世界中が小山千恵子を信じなければ、自分がどんな中傷を浴びせても構わないのだ。
桜井美月は冷たく笑い、楽に後ろに寄りかかった。
この世界はそれほど残酷なのだ。
彼女はとっくにそれを知っていた。
スタッフが熊谷玲子を呼び出し、彼女は先にステージに上がって収録を始めた。