小山千恵子はその場で固まった。
後ずさりする間もなく、顔を曇らせた浅野武樹に腰を抱かれて部屋に連れ込まれ、ベッドに投げ出された。
電話の向こうの藤原晴子は機転が利き、二秒の沈黙の後、すぐに電話を切った。
浅野武樹は画面を一瞥し、ロックをかけてベッドの隅に放り投げた。
小山千恵子が起き上がろうとすると、浅野武樹は警告するように言った。「動くな」
男はゆっくりと歩み寄り、優雅な動きでカフスボタンを外し、袖をまくり上げた。
「渡辺昭の話をしていたのか?」
浅野武樹はサイドテーブルに寄りかかり、余裕の表情でベッドの上の小山千恵子を見つめた。
「私に彼を潰してほしいのか?」
小山千恵子は腕で体を支え、冷たい目つきで浅野武樹を見た。
「違います。私と渡辺昭には何の関係もありません」