浅野武樹は久しぶりにこんなに良い眠りについた。
本来なら終わったら、小山千恵子を主寝室に連れて行くつもりだった。
しかし、彼の腕の中で子供のように疲れて眠る女性を見ていると。
指一本動かす気にもなれなかった。
小山千恵子の目の下には隈があり、目尻は赤く染まっていた。
彼はそれほど何もしていないのに、どうしてこんなにひどく虐められたような様子なのだろう。
見ているうちに、いつの間にか浅野武樹も深い眠りに落ちていった。
朝早く鳥のさえずりで目が覚めると、珍しく空はすでに明るくなっていた。
浅野武樹は眉間をこすり、腕の中が空っぽになっていることに気付いた。
振り向くと、小山千恵子はすでにマネキンの前で作業を始めていた。
集中している様子で、顔に布の切れ端が付いているのにも気付いていない。