第62章 作品は桜井美月の手によって破壊された

浅野武樹は久しぶりにこんなに良い眠りについた。

本来なら終わったら、小山千恵子を主寝室に連れて行くつもりだった。

しかし、彼の腕の中で子供のように疲れて眠る女性を見ていると。

指一本動かす気にもなれなかった。

小山千恵子の目の下には隈があり、目尻は赤く染まっていた。

彼はそれほど何もしていないのに、どうしてこんなにひどく虐められたような様子なのだろう。

見ているうちに、いつの間にか浅野武樹も深い眠りに落ちていった。

朝早く鳥のさえずりで目が覚めると、珍しく空はすでに明るくなっていた。

浅野武樹は眉間をこすり、腕の中が空っぽになっていることに気付いた。

振り向くと、小山千恵子はすでにマネキンの前で作業を始めていた。

集中している様子で、顔に布の切れ端が付いているのにも気付いていない。