小山千恵子は表情を変えずに、目の奥に冷たさを宿していた。
「白石監督、私が率直にお話しするのは、それなりの切り札があるからです。番組制作側の不正競争や、公平性を欠く審査制度についてのニュースが流出するのは、誰も望まないでしょう」
小山千恵子は携帯を取り出し、写真を探して白石監督に見せた。
「私は誰が妨害しているのか知っているだけでなく、証拠も持っています。相手も私が事を大きくしたくないと見込んで、こんなに露骨な行動に出たのでしょう」
白石監督の表情が和らぎ、咳払いをして口を開いた。
「確かに審査規定ではデザイン変更は禁止されていませんが、生地の手配にはそれなりに時間がかかります。それに裁断の時間も必要です。はっきり言って、収録に間に合わなければ、即刻退場してもらいます」