第65章 もう一度千恵子に会いたい

浅野武樹は長い脚を組んで、冷静に椅子に座っていた。

収録現場の騒動を冷ややかに見つめ、まるで他人事のような様子だった。

彼は昔の負けず嫌いな小山千恵子を思い出していた。

頑固で、強情だった。

自分が手を差し伸べると、すぐに拗ねてしまう。

そんな思考は、隣からの弱々しい声で中断された。

「白石監督、二つの作品を出すことは可能なんでしょうか?今までのルールではそんな話は聞いたことがないのですが」

桜井美月は隣に落ち着いて座っている白石監督に向かって、か細い声で質問した。

白石監督は眼鏡を押し上げ、ステージから目を離さずに答えた。

「本来なら、番組の予定時間では一着の衣装制作しかできません。ただし、デザイナーに余力があれば、より多くの優れた作品を見せていただくことは歓迎します」