小山千恵子は番組スタッフの中で過ごす日々が少し楽になってきた。
前回の撮影が終わってから、スタッフもタレントも、彼女を見る目が変わってきた。
今のところ小山千恵子がサンダースであることを直接証明する証拠はまだない。
しかし、彼女の卓越した技術と優れたデザイン能力は第一回の番組で既に示され、評価を得ていた。
しかし小山千恵子は夜も眠れずにいた。
ウェディングというテーマに関しては、彼女が最も豊富な経験を持っていると言える。
しかし、デザイン用紙の前では、一筆も描けなかった。
明日が締め切りという時になっても、小山千恵子の用紙は真っ白のままだった。
もうウェディングドレスが描けないことは、彼女の解けない心の結び目となっていた。
渡辺昭はあっさりと考えていた。
「描けないなら諦めて、さっさと辞めればいい。今は誰も盗作だなんて言わなくなったんだから」
しかし小山千恵子の頭の中は、浅野武樹との取引のことでいっぱいだった。
盗作ではないことを証明する資料は既に手に入れており、理屈の上では、いつでもこの番組から降りることができた。
しかし小山千恵子は生まれつき頑固で、この憤りを飲み込むことができなかった。
桜井美月は浅野家の養女という肩書きを盾に、彼女を踏みにじり苦しめ続けてきた。
一歩引いて考えれば、小山千恵子と浅野武樹の恨みは深すぎて長すぎて、もはや計り知れないものだから、潔く手放すこともできた。
しかし桜井美月に対するこの憤りは、小山千恵子にはそう簡単には飲み込めなかった!
藤原晴子は小山千恵子が夜も眠れず、日に日に憔悴していく様子を見て、ため息をついた。
「千恵子、こうしたらどう?浅野武樹が買ったあのサンダースの作品には、メンズの衣装もセットであったでしょう。どうしてもダメなら、それを出してみたら?」
小山千恵子は心配そうにうなずいた。
彼女もそのつもりでいた。
それは彼女がサンダースとして最後に未完成のまま残した作品だった。
当時、ウェディングドレスを浅野武樹に買われ、それを自分にプレゼントされた時、彼女は密かに決心していた。
そこで密かにメンズスーツをデザインし、結婚式の準備の時に浅野武樹にサプライズを贈るつもりだった。
しかしこのデザイン画は最終的に実物になることはなかった。