第69章 桜井美月の顔を打つのはまだ足りない

小山千恵子はその場に立ち尽くし、熱い視線が一斉に彼女に注がれるのを感じた。

彼女は客席の制作陣に目を向けたが、白石監督は視線を避けた。

誰も制止しようとはしなかった。

小山千恵子は横を向き、桜井美月の目に浮かぶ得意げな表情を見た。

彼女は、この収録の後で番組を去ることになるのを知っていた。

なのに、この瞬間になっても諦めきれず、盗作の罪でこのステージに自分を葬ろうとしているなんて!

客席からは不快な噂話が飛び交っていた。

「二つの作品には確かに大きな差があるわ。小山千恵子によくこんなことができたわね」

「私が桜井美月なら怒り狂うわ。高額なウェディングドレスが小山千恵子の作品だと言われて、私だって吐き気がするわ」

「彼女がどうやって自分の潔白を証明するのか気になるわね。お腹を切り開いて、どれだけの粉を食べたか見せるの?ハハハ」

小山千恵子の心の中で、最後まで残っていた世間との争いを避けようとする忍耐も消え去った。

桜井美月、今度もあなたから仕掛けてきたのね。

小山千恵子は優雅に微笑んだが、その目には隠しきれない冷たさが宿っていた。

「このウェディングドレスは、私が寝る間も惜しんで3ヶ月かけて作り上げました。当然、細部まで丁寧に作り込んでいます。番組のこのメンズウェアは、限られた予算と時間の中で、私にできる精一杯のものです」

小山千恵子の説明は明らかに説得力に欠け、客席からの騒めきはさらに大きくなった。

桜井美月も得意げに口を開いた。

「千恵子さん、私が事を荒立てようとしているわけではありません。今回の収録で、あなたが他のテーマを選んでいれば、私も我慢していたでしょう。でも、わざわざ私が撮影したこのメンズウェアを選び、しかもこんな粗雑な出来栄えで、私は本当に悔しいんです」

悔しい?

小山千恵子は嘲笑うように笑った。

得意げな表情を浮かべる桜井美月のどこが悔しそうなのか、彼女には全く見当がつかなかった。

誰もが小山千恵子がもう策を尽きたと思った時、彼女は肩をすくめて笑った。

「こうしましょう。私がライブ配信を始めます。その配信で、桜井さんのお持ちのこのドレスを再現してみせます。皆さんにもぜひ見ていただきたいですね。その時は桜井さんにも、この『オリジナル』を持ってきて比較していただければと思います」

客席は騒然となった。