第75章 あなたの母は小山雫に殺されたわけではない

小山千恵子は軽く笑い、信じられないという表情を浮かべた。

「浅野社長がようやく約束を守って離婚を承諾したのかと思いました。でも別の算段があったんですね。さすが帝都一の若手実業家です」

浅野武樹は冷たく小山千恵子を見下ろし、不機嫌な表情を浮かべた。

「鑑定結果を受け取って番組を降りると思っていたが、期待し過ぎだったようだな」

小山千恵子は目を逸らすことなく、浅野武樹の底知れない黒い瞳をまっすぐ見つめた。

「確かに番組を降りると約束しました。でも浅野家の名誉を守るとは一言も言っていません」

彼女は浅野武樹が手に持つ書類に視線を落とした。

「それに、もう私は浅野家の人間ではないでしょう」

浅野武樹の目が揺らめき、顎の線が引き締まり、不快な表情を浮かべた。

彼には理解できなかった。なぜ小山千恵子がこんなにも抜け目なく、彼に逆らう女に変わってしまったのか!