第116章 最悪の事態が起きた

小山千恵子の慌てた様子を見て、大野武志は大体理解した。

「浅野武樹はここにいないのか?お前は一人で遊びに来たのか?」

小山千恵子は唾を飲み込み、軽々しく答えることはできなかった。頭の中で必死に考えを巡らせたが、逃げ出す方法は見つからなかった。

以前ナイトクラブ「月光」で、浅野武樹は大野武志をひどく殴り、彼の持っていた港の事業を奪い取っただけだった。

彼は解放されたものの、半殺しの状態だったことは想像もしていなかった。

そして皮肉にも、浅野武樹に命を半分奪われた大野武志とここで出会ってしまった。

虎の口に入った羊、しかも恨みを持つ虎だった。

小山千恵子は顔を蒼白にしながら、無理に笑みを浮かべた。「大野社長、私は遊びに来ただけです。見なかったことにしていただけませんか?」