第116章 最悪の事態が起きた

小山千恵子の慌てた様子を見て、大野武志は大体理解した。

「浅野武樹はここにいないのか?お前は一人で遊びに来たのか?」

小山千恵子は唾を飲み込み、軽々しく答えることはできなかった。頭の中で必死に考えを巡らせたが、逃げ出す方法は見つからなかった。

以前ナイトクラブ「月光」で、浅野武樹は大野武志をひどく殴り、彼の持っていた港の事業を奪い取っただけだった。

彼は解放されたものの、半殺しの状態だったことは想像もしていなかった。

そして皮肉にも、浅野武樹に命を半分奪われた大野武志とここで出会ってしまった。

虎の口に入った羊、しかも恨みを持つ虎だった。

小山千恵子は顔を蒼白にしながら、無理に笑みを浮かべた。「大野社長、私は遊びに来ただけです。見なかったことにしていただけませんか?」

言葉は自信に満ちていたが、震える声が彼女を裏切っていた。

大野武志は明らかにそんな言い訳には乗らず、手を更に強く握り締め、躊躇なく小山千恵子の腰に手を回した。

「小山の女、そんな手は通用しない。前回は手に入れられなかったが、今回はそうはいかないぞ」

そう言いながら、小山千恵子の細い腰に手を回し、汚れた手で滑らかで白い背中を撫で回しながら、引きずるように連れて行った。

小山千恵子は喉の吐き気を必死に抑えながら、どこに連れて行かれるのか分からないまま、よろめきながら歩いていった。

道中、帝都から来た多くの人々が彼女を認識した。

「大野武志がまた誰かに目をつけたのか?また一人、あのベッドから生きて降りられない女か」

「あれは小山千恵子じゃないか?ここまで来てるなんて、浅野家は本当に彼女を見捨てたんだな」

「浅野武樹が以前大野武志にあんなことをしたのが問題だ。彼はこのクルーズ船以外行き場がなくなった。でも彼は長年のチンピラのボスで、この船の傭兵の多くは今や彼の手下になってるんだ!」

「手出しできない。見なかったことにしよう。小山千恵子が運が悪かっただけだ。浅野家が助けようとしても、手が届かないだろうな」

群衆の後ろで、控えめな女性が目を見開いた。

シシさんは目の前の光景を見て、思わず声を上げそうになった。

小山千恵子が、また大野武志の手に落ちてしまった!

彼女は少し考えてから、急いで立ち去り、帝都にメッセージを送った。