第115章 クルーズ船に売られて

小山千恵子が意識を取り戻したとき、どこかで揺れ動いているような感覚があった。

背中と足に冷たさを感じ、目を開けると、狭い船室の空間が目に入った。

潮風の香りが鼻をつき、耳には大きなエンジンの轟音が響いていた。

小山千恵子の心が締め付けられた。

海に連れて来られたのか……

試しに手足を動かしてみたが、拘束はされていなかった。

おそらく麻酔薬の影響で、まだ体がふらつき、後頭部も激しく痛んでいた。

小山千恵子が起き上がろうとしただけで、目の前が回り始め、額に冷や汗が浮かんだ。

仕方なく一度横になり、落ち着いて状況を整理することにした。

おそらくタイヤ交換を手伝ってくれた救援隊に問題があり、いつの間にか麻酔薬を使われたのだろう。

あるいは……

小山千恵子の心臓が跳ねた。

タイヤは最初から故意に破壊されていたのかもしれない!