第113章 黒川家の家長が戻ってきた

桜井美月は護送車の中に座り、笑いを抑えきれない気持ちでいっぱいだった。

藤原晴子というあのビッチの驚愕した表情を思い出すと、心の中で快感を覚えた。

今日の唯一の心残りは、小山千恵子がその場にいなかったことだ。

もしいたら、小山千恵子の表情がどれほど面白いものになっていたか、じっくり見たかったのに!

桜井美月は思わず声を出して笑ってしまい、護送係員は厳しい表情を浮かべた。

「大人しくしろ!」

確かに、誰も予想していなかった。あの無名の美しい女性が、黒川家の血を引く者だったとは。

帝都の黒川家に後継ぎがいないことは、周知の事実だった。

十数年前、ある騒動の後、黒川家は姿を消し、帝都の人々の視界から完全に消え去った。

しかし、今回の登場は派手なものだった。浅野家に対抗するだけでなく、大金を使って一人を救い出したのだ。