携帯電話のリアルタイム監視映像には、藤原晴子の車の中や、小山千恵子が散歩でよく行くベンチ、そして予想もしなかった場所が、すべて厳重に監視されていた。
この監視が何を意味するのか、言うまでもない。
浅野武樹は背筋に冷や汗が走った。浅野遥の机の下にあった遠隔操作爆弾のことを思い出した。
寺田通もスクリーンの内容を見た。見覚えのある藤原晴子の赤いジープラングラーで、運転席の女性がコートを掛けて仮眠を取っており、危険が迫っていることにまったく気付いていなかった。
浅野武樹はバンと机を叩き、低く冷たい声で言った。「桜井美月、まだ懲りていないのか」
桜井美月は何でもないように笑い、携帯を片付けると、足を組んで悠々とお茶を入れ始めた。
「岩崎さん、馬鹿なことはやめましょう。浅野家も、帝都も、もう私には手出しできないわ。そうでなければ、私が刑務所から出て、一命を取り留められたはずがないでしょう?」