浅野武樹は一瞬怔んで、嘲笑うように笑った。
「葬式だって?寺田通、何を言ってるんだ?頭がおかしくなったのか!」
ただ数日間、小山千恵子から目を離しただけだった。
黒川芽衣を倒すための方法を考え、浅野グループを守ることに忙しかっただけなのに。
こんな大きな冗談を言われる筋合いはない!
寺田通は声が掠れ、両手を拳に握りしめた。
「社長、葬儀場から訃報が出されました。今朝一番のトップニュースになっています」
浅野武樹の頭の中で轟音が鳴り響き、一瞬よろめいた。
寺田通の表情を見る限り、こんな冗談を言えるような様子ではなかった。
浅野武樹は半歩後ずさり、めまいを感じながら、長い指で額を押さえた。数本の髪が垂れ落ち、何とも惨めな様子だった。
彼は数歩で書斎の机に戻り、体が机の角にぶつかり、傍らに立てかけてあった万年筆を倒してしまった。