第143章 明日は小山お嬢さんの葬儀

藤原晴子は小山千恵子の手を握りしめた。「分かったわ、手配しておくわ」

小山千恵子の声の確かさと、目に宿る静けさに、藤原晴子は少し安心した。

過去に何があったにせよ、愛であれ憎しみであれ、小山千恵子は今回本当に手放す覚悟を決めたようだった。

小山千恵子も藤原晴子の手を握り返し、温もりが伝わってきた。

人とは、壁にぶつからなければ気づかないものだ。命が枯れ果てるまで、すべての愛憎は重荷でしかないと気づかないのだ。

小山千恵子は車椅子に座り、静かに療養院の最上階へと押されていった。

近くには医療用航空機が待機しており、看護師たちが薬剤や機器を機内に運び込んでいた。

藤原晴子が小山千恵子をゆっくりと押しながら、看護師たちの会話が耳に入ってきた。

「医療用航空機を見るのは初めてよ。この一回の費用だけで数千万円からなのよ!」