第146章 すべてが遅すぎた

浅野武樹は言い終わると、藤原晴子に一歩一歩近づき、骨壺を見ようとする様子だった。

藤原晴子は恐怖に満ちた表情で言った。「浅野武樹、あなた狂ったの?千恵子をあれだけ苦しめて、死んでしまった今も彼女を放っておけないの?」

浅野武樹は藤原晴子が抱えている骨壺に手を伸ばそうとした。

いや、絶対に偽物だ。この中に入っているのは、彼女の遺灰のはずがない!

参列者たちが次々と驚きの声を上げる中、寺田通は素早く浅野武樹を止めた。

「浅野社長、落ち着いてください。それは相応しくありません。」

浅野武樹は体が熱くなり、硬直したまま手を引っ込めたが、目は藤原晴子を見つめ続けていた。

藤原晴子は助けを求めるように寺田通を見た。もしかして、彼らの計画がばれてしまったのだろうか?

寺田通は浅野武樹を落ち着かせながら、気づかれないように首を横に振った。