第158章 まさか彼なのか

藤原晴子は咳払いをして、さりげなく尋ねた。「先生は往診できないのですか?優子ちゃんをあそこに置いておくなんて、心配で仕方ありません。」

小山千恵子は暗い表情を浮かべながらも、優子に優しく微笑みかけた。

「黒川さんによると、先生は高齢のため、もう紅霞寺の外には出られないそうです。そうでなければ、私も帝都に戻らず、直接先生を新国に招いていたでしょう。」

優子を身ごもってから今日まで、多くの苦難を経験してきたが、小山千恵子は小山優子と半日も離れたことがなかった。

優子の柔らかな頬と、ぽっちゃりした小さな手が自分の指を握る様子を見て、小山千恵子の心は切なく寂しかった。

赤ちゃんと一時的に離れ離れになるけれど、母親として、しなければならない決断があった。

「黒川さんは先生の腕を信頼しているので、私も覚悟を決めるしかありません。」