第160章 墓地での再会

小山千恵子は道で新鮮なスズランの花束を買った。白い小さな花は清らかな香りを放っていて、おじいちゃんはきっと喜んでくれるはずだ。

墓地の小道を再び歩くと、小山千恵子は別世界にいるような感覚に襲われた。

前回おじいちゃんを見送って以来、ここには来ていなかった。

慣れた道を通って墓地の一角に着くと、おじいちゃんの墓石の隣には、小さな墓石が置かれていた。

小山千恵子は近づき、自分の小さな白黒写真を見つめた。

二つの墓石の前はほこりひとつなく、枯れたクチナシの花が二束置かれているだけだった。

小山千恵子は考えた末、スズランを二本分けて自分の墓石の前に置いた。

彼女は黙り込んだ。

この二本の花で、かつての自分に別れを告げよう。

おじいちゃんの墓石の前に来ると、小山千恵子は手で浮いたほこりを払い、花を置いた。

「おじいちゃん、ごめんなさい。こんなに遅くなってしまって。前に少し病気になって、もう治ったんだけど、おじいちゃんに伝える前に逝ってしまって……」

「それと、お父さんを見つけたの。三年かかったけど、少しずつ受け入れようとしてるの。おじいちゃんもそれを望んでいたでしょう……」

「あと、おじいちゃん、ひ孫ができたのよ。優子はとても良い子なの。でも私の育て方が悪くて、まだ話せないの……」

話せば話すほど胸が痛くなり、小山千恵子は声を詰まらせ、しばらく言葉が出なかった。

涙を拭いて、笑顔を作った。「あぁ、また泣いちゃった。おじいちゃんに楽しい話をしようと思ったのに……」

小山千恵子は墓石の前で長い間話し続け、喉が渇くほどだった。

冷たい風が吹き、顔を上げると、もう日が沈みかけていた。

小山千恵子はコートのベルトを締め、髪をまとめた。「おじいちゃん、また来るね。」

突然、静かな墓地に足音が響いた。

小山千恵子は理由もなく胸が高鳴り、心臓がドキドキと打ち始めた。

藤原晴子も寺田通も用事があって、この時間に来るはずがない。

こんな時間に誰がいるの?

小山千恵子は足を止め、墓石の前に釘付けになったように、足音の方向から目を離すことができなかった。

逆光の中を大きな影が近づいてきた。男は背が高かったが、背中が少し丸まっていて、とても疲れているように見えた。

小山千恵子は耳鳴りがし、記憶が押し寄せてきた。