小山千恵子は道で新鮮なスズランの花束を買った。白い小さな花は清らかな香りを放っていて、おじいちゃんはきっと喜んでくれるはずだ。
墓地の小道を再び歩くと、小山千恵子は別世界にいるような感覚に襲われた。
前回おじいちゃんを見送って以来、ここには来ていなかった。
慣れた道を通って墓地の一角に着くと、おじいちゃんの墓石の隣には、小さな墓石が置かれていた。
小山千恵子は近づき、自分の小さな白黒写真を見つめた。
二つの墓石の前はほこりひとつなく、枯れたクチナシの花が二束置かれているだけだった。
小山千恵子は考えた末、スズランを二本分けて自分の墓石の前に置いた。
彼女は黙り込んだ。
この二本の花で、かつての自分に別れを告げよう。
おじいちゃんの墓石の前に来ると、小山千恵子は手で浮いたほこりを払い、花を置いた。