小坊主はその様子を見て大変驚き、急いで後を追った。
優子は素直な子供だったが、遊び好きすぎて、寺に来てからは誰も手に負えなかった。
まさかこの小さな腕白が、浅野さんに手を引かれて素直に部屋に戻るとは。
浅野武樹は小さな肉団子のような優子を部屋の入り口まで連れて行き、手を離して立ち去ろうとした。
しかし、ぽっちゃりした小さな手が彼の指をしっかりと掴み、無言で対峙していた。
浅野武樹は眉をひそめ、疑問を帯びた目で彼を見下ろした。
彼は子供の扱いが苦手で、この小僧に付きまとわれたくなかった。
しかも、ここ数日は睡眠不足で疲れており、今も頭がズキズキと痛み、こめかみが脈打っていた。
頭痛が激しくなる前に、すぐに休むのが賢明だった。
小坊主は優子の小さな手を取った。「もういいよ、おじさんは休まないといけないし、君も休む時間だよ。」
浅野武樹の冷たい視線に会い、小坊主は気まずそうに笑い、おずおずと言った。「この子は臆病で、夜一人で寝るのが怖いんです。」
浅野武樹は気にも留めず、額を擦りながら部屋に入ろうとしたが、ふと優子の様子が目に入った。
小さな手をピンク色の拳に握り締め、黒く輝く目をパチパチさせながら、目の縁が徐々に赤くなっていった。
下がった小さな口と、ぽっちゃりした小さな腕は同じように震え、今にも泣き出しそうだったが、必死に耐えていた。
浅野武樹は目を閉じて開き、心の中で不思議と柔らかくなっていた。
もし小山千恵子との子供がまだいたら、この子と同じくらいの年だっただろう。
浅野武樹の心は激しく痛み、深いため息をつくと、手を伸ばして固く握られた小さな拳を取り、広い手のひらで包んだ。
「もし騒ぐなら、すぐに部屋に戻すからな。」
優子のぽっちゃりした小さな顔は喜びに満ち、顔を上げると、長いまつげに大きな涙が一粒引っかかっていたが、顔には明るい笑顔が浮かんでいた。
優子は跳びはねながら浅野武樹の部屋に入り、大きな目で好奇心いっぱいに周りを見回し、快適なソファに登って、ノートを取り出して落書きを始めた。
浅野武樹は思わず笑みを漏らした。この小さな子は本当に遠慮がない。
子供の面倒を見たことがない彼は、部屋に入ると優子のことは放っておき、自分でバスルームに入って風呂に入った。