ようやく週末になり、小山千恵子は紅霞寺で優子に会いに行く途中だった。
あれこれ考えた末、藤原晴子に電話をかけることにした。
浅野武樹に出会ったことは、やはり大きな出来事だったから。
主に千恵子の心が落ち着かなかったからだ。
案の定、藤原晴子は興奮していた。
「墓地で浅野武樹に会ったの???」
千恵子は諦めたように目を閉じ、運転手の方を見て、声を低くした。
「うん、でも不思議なことに、私を見ても特に反応がなくて、普通に雑談までして...」
これが千恵子には最も理解できない点だった。
浅野武樹が自分を責めたり、疑ったりすることは想像していたが、こんなにも平然と対応するとは思ってもみなかった。
藤原晴子はしばらく沈黙し、じっくり考えてから口を開いた。
「千恵子、実はあなたが去った後、浅野武樹の状態はずっと良くないの。寺田通の話では、ずっと心理カウンセリングを受けていて、浅野家の仕事もとっくに手放しているそうよ。」