第162章 千恵子、久しぶり

ようやく週末になり、小山千恵子は紅霞寺で優子に会いに行く途中だった。

あれこれ考えた末、藤原晴子に電話をかけることにした。

浅野武樹に出会ったことは、やはり大きな出来事だったから。

主に千恵子の心が落ち着かなかったからだ。

案の定、藤原晴子は興奮していた。

「墓地で浅野武樹に会ったの???」

千恵子は諦めたように目を閉じ、運転手の方を見て、声を低くした。

「うん、でも不思議なことに、私を見ても特に反応がなくて、普通に雑談までして...」

これが千恵子には最も理解できない点だった。

浅野武樹が自分を責めたり、疑ったりすることは想像していたが、こんなにも平然と対応するとは思ってもみなかった。

藤原晴子はしばらく沈黙し、じっくり考えてから口を開いた。

「千恵子、実はあなたが去った後、浅野武樹の状態はずっと良くないの。寺田通の話では、ずっと心理カウンセリングを受けていて、浅野家の仕事もとっくに手放しているそうよ。」

千恵子は思わずまぶたが痙攣し、追及した。「彼がそんな状態なの、どのくらい続いているの?」

自分が去って3年以上経つのだから、浅野武樹もどんなに未練があっても立ち直っているはずだと思った。

藤原晴子はもごもごと言い淀み、深いため息をついた。「はぁ、もういいわ。元々言わないつもりだったのは、あなたが心配するのを避けたかったからよ。でもここまで聞かれたんだから、隠しても仕方ないわね。3年以上、ずっとこんな状態なの。特にここ半年は、かなり悪化してるわ。」

紅霞寺の正門に着くと、運転手が丁寧に尋ねた。「紅霞寺の正門でよろしいですか?」

千恵子は電話を離し、応答した。「はい、正門で結構です。」

電話の向こうで藤原晴子の声が八度上がった。「今、紅霞寺に行くの?」

千恵子は車を降り、門の前に立った。「そう、今着いたところ。週末だから、優子の様子を見に来たの。」

初めて優子とこんなに長く離れ離れになり、日夜思い続けていた。小さな子がここで適応できているかどうか心配だった。

藤原晴子は頭を抱えていた。

浅野武樹はとっくに入院して治療を受けるべきだったが、本人が拒否し続け、浅野家への影響も考慮して、ようやく週末だけ紅霞寺で治療を受けることに妥協したのだ。

これ以上千恵子と顔を合わせることになれば、事態がどう展開するか分からない。