第178章 これから、彼はあなたの息子です

桜井美月は涙が頬を伝って止まらなく流れ、戸惑いながら涙を拭っていた。

彼女はついにこの日を待ち望んでいた！

女子刑務所は巨大な闘技場のようで、入所したばかりの頃は、いじめられて顔を上げることもできなかった。

その後、彼女は歯を食いしばって耐え、最も多くの仕事をこなし、最も汚いトイレを掃除し、早期釈放のチャンスを得るために頑張った。

この数年間、誰も面会に来なかった。黒川芽衣も来なかった。

婚姻届を出した日、浅野武樹は彼女に逃げ道を残さず、多くのメディアを呼び、大きな騒ぎになった。

帝都では、誰もが桜井美月との関係を断ちたがっていた。

彼女は、もうこの世界で自分の味方になってくれる人はいないと思っていた。

彼女は、出所しても海都スラム街でのように、最底辺からはい上がって、やり直すしかないと思っていた。

しかし桜井美月は、浅野遥がまだ自分の味方でいてくれること、守ってくれること、そして早期釈放のために惜しみなく尽力してくれることを、まったく予想していなかった！

以前は人を見誤り、間違った側につき、黒川芽衣に付けば黒川家という高枝に登れると思っていた。

しかし彼女は笑えるほど、とんでもなく間違っていた！黒川芽衣は黒川家の捨て駒に過ぎず、捨て駒の娘には当然何の地位もなかった。

そして浅野家こそが、彼女の最高の居場所だったのだ！

父が命を賭けて浅野遥の命を救ったのだから、彼が自分に冷たくする理由はない。

浅野遥は桜井美月ともう少し話をして、出所後の手配をはっきりさせるつもりだったが、刑務所に着く前に浅野武樹からの電話を受けた。

彼が目覚め、久しぶりに自分のことを「父さん」と呼んだのだ。

浅野遥は気もそぞろに二言三言言い残し、刑務所から第一病院へと急いだ。

病室の入り口に着くと、主治医が中から出てきて、やや厳しい表情を浮かべていた。

浅野遥は胸を締め付けられる思いで近寄り、「先生、息子の状態はどうですか？」

主治医は頷いて挨拶を済ませると、本題に入った。「浅野さんの状態は良好で、今のところ悪い反応は見られません。ただし、先ほど撮った頭部CTの結果では、脳の活性化している部分が以前とは確かに異なっています。認知面についてさらに検査を進めていきます。何か変化があれば、すぐにお知らせします。」