第179章 自分の息子も覚えていないのか?

桜井美月はロールスロイスに乗り込み、まだ動揺が収まらず、浅野遥にこの行動の理由を尋ねようと躊躇していた。

浅野遥は厳しい表情で窓の外を見つめ、特に説明する気配はなかった。

健一郎は浅野遥と桜井美月の間に緊張した様子で座り、左右を見比べては、頭を下げて動けずにいた。

桜井美月は考えれば考えるほど腹が立ち、憎しみが募っていった。

浅野遥は知っているはずだ、彼女がもう出産能力を失っていることを。

突然、三歳の子供を連れて帝都に現れれば、周りの人々は彼女をどう見るだろうか!

それに、もしそうするにしても、直接子供を刑務所に連れて来るべきではなかった!

確かに彼女は幼い頃から海都スラム街で育ち、そこは刑務所よりも何倍も汚く暗かったが、この数年の刑務所生活は、桜井美月の人生で最大の汚点だった。