第188章 会うべきではない人に会ってしまった

小山千恵子は一歩一歩と着実に歩いてくる千葉隆弘を見て、軽くため息をついた。

これで良かった。修羅場どころか、超特大版の修羅場になってしまった。

千葉隆弘はポケットに手を入れたまま、のんびりと小山千恵子の横に立ち止まり、興味深そうに口を開いた。

「やあ、桜井さん、井上晶子、君たちもここにいたのか?何を話してたの?楽しそうだね」

浅野武樹は冷ややかな目で見つめながら黙っていた。彼は目の前の男を知っていた。

海都の千葉家の次男で、レーシングチームを経営しており、帝都で「物乞い」をしながら、投資とスポンサーを募っていた。

面白い男だ。帝都の名家のほとんどに人脈を使って接触していたが、唯一浅野家には近づかなかった。

井上晶子は愛する男が見知らぬ女の傍に立つのを見て、心の中で怒りが燃え上がった。