第185章 桜井美月？彼女は刑務所に入っていたの

小山千恵子は頭がゾクゾクして、思わず帽子の縁を押さえた。

こんなに長い時間が経っているのに、すぐに見破られるとは思わなかった。

足早に歩いていても、記者たちの議論が耳に入ってきた。

「まさか、小山千恵子はもう死んでいるはずだよ……」

「小山千恵子って誰？有名な人？」

「似ている人かもしれないよ、そんなに気にすることないでしょう。渡辺昭の写真をもっと撮った方がいいわ」

小山千恵子はほっと息をつき、宴会場に入ると、自分がずっと拳を握りしめていて、爪が手のひらに食い込んでいたことに気づいた。

帝都に戻り、過去と向き合うことになって、やはり緊張してしまう。

千葉隆弘がシルバースターレーシングチームの主要メンバーを引き連れて入場してきて、多くの注目を集めた。

背の高いイケメンの若者たちが揃いの黒いスーツを着て、表情は黒いキャップの下に隠れ、胸元のシルバースターのロゴが銀色に輝き、かなりの威厳を放っていた。

夜会の華やかなテーマとは不釣り合いだったが、千恵子は少しリラックスして、そこまで緊張しなくなった。

パーティー会場に入ると、杯を交わす音が響き、客たちは皆ほろ酔い気分で歓談していて、ビジネスを話し合うには最高のタイミングだった。

千葉隆弘は足を止め、少し体を傾けて、小声で話しかけた。「千恵子さん、大丈夫ですか？」

小山千恵子は微笑んで、隆弘の肩についた紙吹雪を払いながら答えた。「もちろん、あなたは自分の仕事に集中して」

今回の夜会に出席する必要な用事は特になく、隅で観察しているのが一番いい。

千葉隆弘と渡辺昭が離れていき、ちょうど静かな時間ができた。

もう4年近く経って、帝都では小山千恵子という人物を知る人がいないかのようだった。

広大な帝都は、誰がいなくなっても、相変わらず人々で溢れかえっている。

小山千恵子が手を引っ込める間もなく、クリスタルネイルをした手が突然伸びてきて、千恵子の手を払いのけた。

「何してるの？隆弘から離れなさいよ！」

甘えた声が響き、横柄な女性が突然千葉隆弘と小山千恵子の間に割り込んできて、怒りに満ちた表情を浮かべていた。

千葉隆弘は表情を変え、小山千恵子を引いて半歩下がり、冷たい声で言った。「井上晶子、無理な騒ぎを起こすな！」