小山千恵子は浅野武樹と単独で会うことについて、まだ考えていなかった。
この数日間は企画書の作成、プロジェクトの進行、売却予定の会社の対応に追われ、浅野武樹のことなど全く頭になかった。
小山千恵子は深く息を吸って吐き、しばらく沈黙した後、唇を引き締めて落ち着いた声で話し始めた。
「藤原社長、浅野社長との単独交渉の件、承知しました。ただし、時間と場所は私が選ばせていただきます」
藤原社長は安堵の溜め息をついた。「はい、もちろんです。浅野社長にお伝えしましょうか?それとも萩原さんから直接ご連絡されますか?」
きっとこの萩原さんは浅野グループの浅野社長と何かしら接点があるのだろう。こんな難しい状況では、二人で直接話し合うのが一番いい。自分がこれ以上板挟みになるのは避けたかった。