第213章 不可解な独占欲

小山千恵子の目に信じられない色が閃き、すぐに声を失って笑った。

彼女はそこまで計算していなかったのに、浅野武樹は彼女を買いかぶっていたようだ。

彼の言葉の意味は、桜井美月がそこに現れたことまでも、彼女の計算だというのか?

申し訳ないが、小山千恵子にはそこまでの力はないし、そんな卑劣な手段を使う気も無い。

小山千恵子は深いため息をつき、楽な姿勢に座り直して、さわやかに笑った。

「浅野社長が私をどう思おうと、お好きにどうぞ」

ただし、記憶を取り戻した後で、後悔しないでくださいね。

後半の言葉は喉元で止めた。これ以上浅野武樹を怒らせるわけにはいかない。

彼女は早く彼の記憶を取り戻させることばかり考えていたが、浅野武樹が如何に深謀遠慮で慎重な人物であるかを忘れかけていた。