第265章 さあ、浅野社長の条件は何でしょう?

社長室。

浅野武樹は新しいメールを開くと、表情が冷たくなった。

彼は浅野家の幹部グループで、今回のショーの運営を全面的に担当すると宣言し、小山千恵子の後ろ盾になろうとしていた。

なのに、まだ誰かが邪魔をしようとしている。

法務部が次々と難癖をつけてくるのは、明らかに誰かの指示を受けているからだ。

浅野武樹の胸が波打ち、薄い唇が不快そうに結ばれた。

桜井美月、事ここに至ってまだ公然と騒ぎを起こすとは、自分の身についた汚名がまだ足りないとでも言うのか。

浅野武樹は電話を取った。「寺田、小山千恵子を私の部屋に呼んでくれ。」

寺田は承諾し、自ら足を運ぶことにした。

浅野武樹の秘書として、彼もそのメールのCCに入っており、何が起きたのかを把握していた。

以前なら、このような事態は小山お嬢さんが自分で処理し、浅野社長の前に持ち出すことは滅多になかった。

今のこの状況は、二人の関係が改善されつつあるということなのだろうか……

寺田に呼び出された小山千恵子は、特に驚きはしなかった。この件は確かに浅野武樹と直接話し合う価値があった。

専用エレベーターに乗り込むと、寺田は言いかけては止めた。小山千恵子は穏やかに微笑んだ。「寺田補佐、聞きたいことがあるなら言ってください。エレベーターは30秒で着きますよ、時間はあまりありませんから。」

寺田は苦笑いを浮かべ、眼鏡を押し上げた。「特に何もないんですが、小山お嬢さんもお察しでしょう。浅野社長とお嬢さん、最近はいかがですか?彼の記憶は、どのくらい戻ったんでしょうか?」

小山千恵子は目を伏せ、瞳の中の不安を隠した。「まあまあです。少し思い出したようですが、限られた部分だけです。」

寺田は頷いて黙り込んだが、心中は複雑だった。

小山千恵子が浅野家に来てから、浅野社長はいつも彼に社長室の仕事を陰で見守るよう指示し、浅野社長の視線も自然と小山お嬢さんに向けられがちだった。

寺田は小山千恵子の何気ない様子を密かに観察しながら、心の中で溜息をついた。

もし小山お嬢さんの浅野社長への感情が本当に終わっているのなら、浅野社長の一方通行の想いになってしまうだろう。

社長室に入ると、小山千恵子は広い机の前まで歩み寄った。「浅野社長、お呼びでしょうか?」