第275章 健一郎の親権が欲しい

浅野武樹は怒りを抑えながらも、声の中の冷たさと威圧感は隠しきれなかった。

「桜井美月、私は前にも言ったはずだ。私を尾行するなと」

桜井美月は覚悟を決めたような表情で、泣きそうな笑みを浮かべた。

「あの時は確かに手段を選ばなかったけど、今は違うの」

浅野武樹は興味深そうに顔を上げ、腕を組んで目の前の顔色の悪い女を見た。「ほう?」

彼は目の前のこの女の手段が大したものになるとは思えなかった。

桜井美月の目は絶望と狂気に満ちており、冷笑を浮かべた。

「あなたが離婚を持ち出した後、離婚弁護士を寄越したでしょう?彼らの方からこうするように提案されたの」

浅野武樹は桜井美月が離婚という言葉を口にするのを聞き、目から興味が消え、冷たく嘲笑った。「で、何が欲しいんだ?」

桜井美月はバッグの持ち手を握りしめ、歯を食いしばって切り出した。「健一郎の親権が欲しいの」