電話を切ると、男は再びソファに寄りかかり、目を閉じて休んでいた。喉仏が時折上下し、頭の中にはまだめまいが残っていた。
モリ先生が冷えたコーラを持ってきて、パチッと開けると、小さな泡の音が聞こえた。
「少し元気を出して。初めての治療としては、よくやりましたよ」
浅野武樹は喉から「うん」と声を出しただけで、多くを語らず、複雑な心境だった。
臨床治療が大変だろうとは思っていたが、こんなにも辛いとは思わなかった。
電気ショックの痛みはまだ些細なことで、脳を鉄の棒で何度も掻き回されるようなめまいの方が耐え難かった。
できることなら、自分のこんな惨めな姿を小山千恵子に見られたくなかった。
モリ先生が信頼できる人を呼ぶように提案した時、最初に思い浮かんだのが彼女だった。
今、彼は放課後に保護者に迎えに来てもらう子供のように、珍しく期待感を抱いていた。