第320章 生死を分ける瞬間の守り

小山千恵子は両手で手すりをしっかりと握り締め、車体が激しく揺れる中、不注意で頭がガラスに当たってしまった。

浅野武樹は歯を食いしばり、滑りやすい路面で車体をコントロールしながら、道を塞ぐハマーを危うく擦り抜け、恐ろしい金属の摩擦音を立てた。

「大丈夫か?」

浅野武樹は心配そうに尋ねながら、スピードを上げた。

黒いロールスロイスは影のように林間道路に滑り込んだ。

幸いにも、この道は浅野武樹がよく知っている場所だった。そうでなければ、この吹雪の夜では事故を避けるのは難しかっただろう。

今は、これが後ろを追ってくる二台の暴走車を振り切る最善の方法だった。

「私は大丈夫よ」

小山千恵子は気を取り直し、冷静さを保とうと努めながら、頭の中で考えを巡らせた。

大野武志や黒川芽衣、そして桜井美月にしても、彼女を狙うには条件があり、目的があった。