小山千恵子は突然めまいを感じ、頭が重く足が軽くなった。
そんなはずない、浅野武樹がこんな風に死ぬはずがない!
傍らの救急医が素早く彼女を支え、厳しい表情を浮かべた。
「奥様、慌てないでください。あなたもまだ怪我をされていますので、さらなる検査が必要です。今は軽々しく動かないほうがいいですよ!」
小山千恵子の両手は冷たく、全身が震え、声もほとんど出なかった。
「彼は、彼はどうですか?」
医師は眉をひそめ、躊躇した後、慎重に言った。
「生命反応を確認しました。まずは救急車で病院に行って検査を受けてください。こちらで進展があれば、すぐにお知らせします。」
小山千恵子は首を振った。
このまま救急車で現場を離れる気にはなれなかった。
浅野武樹の状態を自分の目で確認するまでは!