モリ先生はすでに一時的にクリニックを閉め、医師や看護師を休ませ、自身は退屈そうに受付に座って、キャンディーを噛みながら文献を読んでいた。
浅野武樹が受付を通り過ぎながら、頷いて合図した。「申し訳ありません、すぐに処理します。」
モリ先生は気にせず手を振った。「大丈夫です、来週また定時に来てください。」
深く息を吸い込み、小山千恵子はマフラーを握りしめ、湖畔クリニックの玄関を開けた。
一瞬、フラッシュとシャッター音が激しく鳴り響き、心に恐怖が込み上げてきた。
浅野武樹は小山千恵子の横に寄り添い、逞しい腕で安全な空間を作り出したが、彼女には触れなかった。
浅野武樹が呼んだ警備員がすぐに人混みを分け、二人とレポーターを隔離した。
小山千恵子はそれでも押されてつまずきそうになったが、浅野武樹が素早く彼女を支え、すぐに手を離した。