第311章 浅野武樹は去るのか？

小山千恵子は少し焦って言った。「浅野武樹、焦らないで。今浅野家を離れるのは、最悪の選択よ。取締役会の目が光っているから、これを口実に何か言い出す人が出てくるかもしれない」

浅野武樹は冷たく笑い、目に寂しさが浮かんだ。

「分かっている。むしろ彼らが何も言わないことの方が心配だ。それに浅野グループは、元々俺のものじゃない」

小山千恵子の心配そうな目を見て、浅野武樹の気分は不思議と良くなった。「それとも、俺がいなくなったら、浅野家であなたが孤立して、後ろ盾を失うことを心配しているのか？」

小山千恵子は思わず口走った。「あなたが浅野家を離れたら、私がここにいる意味なんてないわ」

言い終わってから、この言葉がどれほど誤解を招くかに気づいた。

そして明らかに、目の前の冷厳な男の唇には笑みが浮かんでいた。