第315章 浅野武樹が変わってしまった

彼女は浅野武樹に対して、確かに未練があった。

桜井美月がどれほど上手く演技をしても、所詮はスラム街出身の賤しい身分に過ぎなかった。

浅野家の身分さえ手に入れられたのだから、手段を尽くせば手に入らないものなどないはずだった。

浅野武樹に出会うまでは。

心に別の女性を秘めている男性は、どうしても手に入れることができないのだと分かった。

それなら完全に破壊するしかない。

桜井美月は冷静さを取り戻し、声はまだ少し虚ろだったが、口調は冷たかった。

「浅野家には別の思惑があるわ。この後ろ盾が必要なら、軽はずみな行動は控えめにね。少なくともショーの前までは、あなたと大野武志は大人しくしていた方がいい。私と浅野家に面倒をかけないでちょうだい」

黒川芽衣はウェイターと少し話をした後、無関心そうに答えた。「私はどうでもいいけど、心に人がいる男を好きになるほど安っぽくないわ」