浅野武樹は手すりに片手を置き、長い人差し指でベルベットのサテン生地を叩いていた。
男は何も言わなかったが、その目には冷たさと計算高さが満ちていた。
寺田通にとって、このような浅野武樹の姿は見慣れたものだった。
長年一緒に仕事をしてきて、これが浅野武樹の顔に最もよく見られる表情だった。
時々彼は不思議に思った。浅野武樹のやつはどうやってスキンケアしているのだろうか。
毎日しかめっ面をして、深い恨みでもあるかのように眉をひそめているのに、顔にはしわひとつないなんて……
寺田通が浅野武樹を見つめて考え込んでいると、馴染みのある冷たい声で我に返った。
「ぼんやりするな。浅野秀正の方は、しっかり監視して、不用意に動くな。それと、もう一つ——」
言葉が終わらないうちに、浅野武樹の携帯が鳴り出した。