第352章 彼女を再び手に入れたい衝動を抑えられない

浅野武樹は手すりに片手を置き、長い人差し指でベルベットのサテン生地を叩いていた。

男は何も言わなかったが、その目には冷たさと計算高さが満ちていた。

寺田通にとって、このような浅野武樹の姿は見慣れたものだった。

長年一緒に仕事をしてきて、これが浅野武樹の顔に最もよく見られる表情だった。

時々彼は不思議に思った。浅野武樹のやつはどうやってスキンケアしているのだろうか。

毎日しかめっ面をして、深い恨みでもあるかのように眉をひそめているのに、顔にはしわひとつないなんて……

寺田通が浅野武樹を見つめて考え込んでいると、馴染みのある冷たい声で我に返った。

「ぼんやりするな。浅野秀正の方は、しっかり監視して、不用意に動くな。それと、もう一つ——」

言葉が終わらないうちに、浅野武樹の携帯が鳴り出した。