桜井美月は心が沈み、服の裾を掴みながら、不適切な感情や考えを抑え込もうとした。
浅野武樹と彼女は、もはや完全に他人同士となっていた。
いや、それ以上に、彼らは敵同士の関係だった。
彼女が失ったすべて、諦めたすべては、小山千恵子と浅野武樹の命を奪うためではなかったのか!
桜井美月は冷たく言った。「元恋人?浅野武樹は一度も私の恋人ではなかったわ。」
彼女は立ち上がり、フランネルのガウンを身に纏い、ゆっくりと階上の部屋へ向かった。
「優柔不断で、恋愛脳。私と並び立つ資格なんてないわ。」
浅野秀正は桜井美月の後ろ姿を興味深げに見つめながら、淡々と言った。「彼が死んでも、平然としていられるのか?」
桜井美月は半ば振り返り、口元に笑みを浮かべた。「あの人があまりにも簡単に死ぬのが心配なだけよ。」