第363章 最初から彼への罠だった

浅野武樹は落ち着いてバイクにまたがり、長い脚で地面を支え、逃げる様子は全くなかった。

ハーレーのバイクの雷鳴のような轟音が近づき、傲慢な地元のチンピラたちを包囲した。

三発の警告射撃が鳴り響いた。

数秒前まで威張り散らしていたチンピラたちの顔色が一変した。

「黒川家の連中じゃないか、なぜだ?!」

「こいつの罠にはまったんだ!」

「何を考えてる場合じゃない、早く逃げろ!黒川家に逆らって、港町でやっていけると思うのか!」

昼のように明るいバイクのヘッドライトの下、チンピラたちは慌てふためく鼠のように、無数のコンテナの間に素早く姿を消した。

浅野武樹はバイクから降り、ほっと息をつき、ヘルメットを脱いで脇に投げ捨てた。

「ちっ、面倒だな。」

情報提供者が現れなかった時点で、もっと慎重になるべきだった。