第362章 浅野武樹を始末しろ、手早くな!

小山千恵子は黙って揺らめく炉の火を見つめ、物思いに沈んでいた。

彼女自身、今の浅野武樹に対する気持ちがどういうものなのか、まだはっきりとはわからなかった……

というより、この問題について考えることを避け続けていたのだ。

彼を許すことは、過去に彼から受けた苦しみに申し訳が立たないような気がした。

他人のように距離を置きながらも、彼の一挙一動に心が揺さぶられてしまう。

しかし浅野武樹が記憶を取り戻してからは、二人は抗いがたい相互の引力に捕らわれているようだった。

この制御不能な感覚が、さらに彼女の心を不安にさせた。

小山千恵子は、まったく急いでいる様子もなく淡々としている黒川啓太を見上げ、今日は必ず答えを求めるつもりだということを悟った。

「お父さん」小山千恵子は少し苦しそうに口を開いた。「私、わからないの」