第384章 もう一つのこと、私は決めた

小山千恵子は呆然としていた。頭の中で思わず浅野武樹のことを考えていた。

男が何を犠牲にしても、何度も彼女の前に立ちはだかる背中を思い出した。

彼がヘリコプターから衰弱した状態で降ろされた姿を思い出した。

化学工場の爆発事故で、彼は約束通り、小山優子を無傷で彼女のもとに返してくれた。

あの息詰まるような雪原での追跡劇で、彼が無意識に自分を守ろうとした姿も思い出した。

時には優子を見ていると、小山千恵子は物思いに耽ることもあった。

小山優子と浅野武樹は、まるで同じ型から作られたかのようだった。

眉をひそめる表情や、集中している時の鷹のような眼差しまで、そっくりだった。

いつの間にか、彼のことを心配し、制御できないほど怒りを爆発させることもあった。

次第に警戒心を解き、誰にも見せたことのない一面を見せるようになっていた。