小山千恵子の顔が突然赤くなり、軽く咳をして部屋に立っている医者と看護師を横目で見た。
「あの、浅野早志はもうすぐ退院検査を受けるから、ここで薬を交換して点滴を打って、手続きを済ませたら戻ってくるわ」
浅野武樹の眉間の皺が緩み、ため息をついて抵抗を諦めた。「わかった、待っているよ」
看護師長は目に浮かぶ驚きを隠しきれなかった。
朝早くから浅野さんは退院を騒ぎ立て、怒り狂ったライオンのように、誰も止められず、院長のところまで話が行きそうだった。
彼女も仕方なく、浅野早志の病室に行って、家族がいるかどうか確認しに行った。
浅野早志の看護人の田島さんが提案してくれたのは、小山お嬢さんに電話をかけてみることだった。
思いがけず一本の電話で、すぐに来てくれて、数言で浅野さんを落ち着かせた。