小山千恵子は浅野早志の退院検査がすぐに終わると思っていたが、予想外に児童精神科でかなりの時間を費やすことになった。
主任は浅野早志に対して総合的な検査を行い、絵画や砂遊びなどの心理療法も多く採用した。
終わる頃、小さな子は口を尖らせ、お腹をさすりながら「ママ、お腹すいた」と言った。
小山千恵子は分厚い報告書を手に持ちながら、浅野早志のふわふわした頭を撫でて「ケーキを買いに行きましょう。それからパパの病室で合流するのはどう?」と言った。
健一郎は素直に頷き、嬉しそうに田島さんと一緒に食堂へ向かった。
小山千恵子は児童精神科主任の診察室に残り、報告書を丁寧に読んでいた。
いつも慈愛に満ちた穏やかな表情の主任の顔が少し厳しくなった。「浅野早志君は幼い頃から運命に翻弄され、安定した環境で育つことができませんでした。そのため、強い不安感を抱えており、それが徐々に身体や行動に影響を及ぼしています。」